IT業界はスキルが給料を上げるのか?年齢が給料を決めるのか?

<IT業界はスキルが給料を上げるのか?年齢が給料を決めるのか?>

IT業界に所属して20年ほどいますが、その時の給料UPがスキルに基づくのか、年齢に基づくのか?の判断された基準や、私自身が部下の給与を査定したときにどのような判断を行って給料が決まっていくのか?をご説明したいと思います。

 

<書いた人の紹介>

転職職人と申します。2000年に新卒で大手SIerに入社。就職氷河期に入社したので、入れそうな会社にとりあえず入社。2~3年したら転職して給料が良いところに転職しようとして大手コンサルティングファームに転職エージェント経由で転職。その後、5社転職して現在もIT企業に在籍、マネージャー、部長、役員など幅広く経験しています。また、在籍している企業では毎年数十人の面接官や、部下の給与査定は毎年おこなっているので、給与査定時に何を考えているか?をお伝えします。

 

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<給与の査定と評価がどのように行われているのか?>

どのような会社でも給与の査定が行われて、自分の給与が決定します。まずはその仕組みから説明したいと思います。給与の査定自体は、会社にもよりますが、年に1~4回ほどあると思いますが、いくつかの方法があります。

・MBO( Management by Objectives)目標管理制度

期初または、4半期に1度の期間で目標を定めて目標達成具合を評価しますが、目標の設定具合によって現場が振り回されます。

・会社の目標または、部署の目標達成制度

間接部門などは自分の目標が立てづらいので、会社の売上や利益の達成度に応じて評価を行いますが、何もやっていない人までも高い給料がもらえてしまう事が良く起こります。

・ざる運用、どんぶり勘定

この制度の採用が最も多く、根拠なしで給与が決まっていきます。一応、その年や期間でのやったことを元に評価されますが、大体のIT企業の裏側はこんなものです。

・360度評価

あらゆる人物からの加点を合計して評価基準にします。そのため、公平な採点になりますが、どうしても知り合い同士の評価にしかならないです。

・年功序列型のベア昇給

大手の組合があるような会社はベア昇給といって、一律の賃金上昇があります。ところが、がんばっている人も、がんばっていない人も年功序列で給与がUPされるため、つかえない上司の方が給与をいっぱいもらう事がよくあります。

・昇給会議で順位付け

毎年の給与査定を元に、すべての人員の等級や職位などを見直します。毎年どの人材を引き上げるのか?などの会議をしますが、結果的には上司のお気に入り人材と、かわいい女子の給与が上がる傾向が高いです。そもそも、上位の役職に取り入ったもの勝ちという感じです。

 

以上が私が所属してきた微妙な評価制度でした。

ところが、給与は私自身も上がり続けてここまできたのですが、ちゃんとした給与が上がるロジックと統計データがありますので、次の紹介します。

 

<国が調査した給与査定のデータ>

下記のデータは、国の経済産業省が2017年に調査した給与査定のアンケートからの統計をしめしたものになります。これは、当然ながらかなりの信ぴょう性があるので、納得して頂けると思っています。

引用元:IT関連産業の給与等に関する 実態調査結果

社内で最高水準の年収を達成している人材は何を評価されているのか

社内で最高水準の年収を達成している人材は何を評価されているのか

まずは、何をもって評価しているか?の基準についでのデータです。これを見ていただければわかるのですが、35歳以下の人材は圧倒的にスキルを評価して年収を決定しています。また、35歳以上の人材に関しては、高いマネジメント力に基づく評価が圧倒的に評価されている事がわかります。

つまり、見たまんまでは、若いうちはスキルを評価し、年を取ってくるとマネージメント能力を評価するという一般的な評価基準に基づいて年収が決まってきているという事が良く分かります。これはIT業界に限らず、どの業界でも同じような評価基準として採用されている一般的な基準と変わらないという事ですね。

ほかにも統計を見てみましょう。今度はスキルを何をもって評価しているのか?についての統計データになります。

「ITスキル」を判断する上で何が重要なのか

「ITスキル」を判断する上で何が重要なのか

こちらの情報を見ていただければわかるのですが、IT業界のスキル評価の項目として一番の評価対象となっているのは、保有資格になります。この保有資格はシステム関連コンサルティング、受託システム開発、ソフトウェアプロダクト開発・販売、技術者派遣の業種においては7割近くが評価基準としています。これはどう考えてもIT業界でスキル評価で高評価を勝ち取るには、資格を取るしかないという事が良くわかると思います。つまり、IT業界で給与を上げるには、若いころに資格を取り、給与を上げて、専門性を高めた上で、年を取ったらマネージメントが行えるように常に現場ではマネージメントスキルを磨いていくという鍛錬が毎日必要という事になります。

 

<過去の体験からの給与UPの事例紹介>

今までは、経済産業省の統計データからIT業界の給与がどのように決定されているか?を理解して頂いていましたが、私の過去の実際の体験を元にお話ししたいと思います。私が過去に給与が最も上がったでき事は、当たり前ですが、転職になります。通常の企業だと、年1回の査定で100万円以上の給与が上がることはかなりまれな経験になると思います。そもそも、1年に100万円の給与UPは商社や一部の大手企業しか上がらないという認識でいたほうが良いかと思います。その100万円以上の給与UPが転職によってもたらされるという認識は間違いありません。ちなみに、転職以外での給与UPはこのような事例によりました。

・上司が辞めて役職が空いたため、偶然昇進したので給与が120万円UPした。

・その期の業績が非常に良かったので、給料が100万円UPした。

・自分が企画した事業がコンスタントに売上増加して、給与が100万円UPした。

これだけの事例が毎年続くことは当然ありませんから、給与が上がったのは、ラッキー半分と実力半分といったところでしょうか。

 

<年功序列とスキルレベルや仕事の成果の評価>

下記の図は、経済産業省の統計データからの抜粋ですが、企業側も個人が考えているとおり、年功序列よりもスキルや成果を元に評価を重要視するべきだと考えているという証拠になります。日々進化していくIT業界では、年功序列で役に立たない人材が多くいるよりも、若手でスキルが高く、成果もだしている人材を採用するのが当たり前のようになってきているのです。

IT関連企業の給与制度の今後の動向(企業側の認識)

IT関連企業の給与制度の今後の動向(企業側の認識)

年功序列ではなく、スキルと実績評価が当たり前の世界になっているか?という実態に対するご意見が当然あると思いますが、まだまだそのような実態にはなっていません。というのも、このIT業界も歴史は浅いですが、IT業界の立ち上げに尽力してきたような初期のIT人材が大勢いらっしゃいます。この人材がいなかったら、このIT業界自体が立ち上がってきていないのです。もちろん、現状のIT業界についていけない人材も多く存在している事は私も良くわかっていますが、IT業界でも他の業界でも、その業界をリードしてきた昔の人材がいたからこそ成長してきたという事は間違いありません。ちなみに、私も年功序列には全くもって反対ですが、経験と体験、実績を重ねてきた過去から続く業界の歴史を真っ向から否定できるものではありません。という事で、ある程度の年功序列は仕方がないという結論でした。しかし、イケてない上司の下につくイケてる部下はこの制度のために何度も煮え湯を飲まされているので、早くIT業界も実績ベースの評価になってほしいです。ちなみに、私と同じような事を考えているアンケートがついていましたので、次で解説します。

 

<能力や成果を評価する上での課題>

 

IT関連企業の給与制度の今後の動向(能力・成果評価に関する課題)

IT関連企業の給与制度の今後の動向(能力・成果評価に関する課題)

見てのとおり、能力や成果に対する基準が分かりやすく整理されていると思います。1番目の「基準が明確ではない」の部分から解説しますが、定量的な仕事というのは非常に難しく、すべてのタスクが数値化されるか?というと、現実的ではなく、PCの操作画面を勝手に評価してくれるプログラムが開発されなければ、不可能な評価だと思います。それはそもそも無理なので、期初に無理やり設定した定量の評価項目を業務としておこなう事の困難度を指しています。これ自体も未来予知ができない限り、どんぶり勘定の設定された値に対しての評価であり、目標が低ければ容易に達成できてしまう事がどの組織でも発生しているという証拠になると思います。

また、2番目の「成果が把握しずらい」という項目に関してですが、アウトプットした成果に関しても、資料を作ったという事自体が評価されるのか?それとも資料を作った通りに開発が進んだことを評価されるのか?しかし、作ったのは自分ではない。など、どこまで自分の評価なのかがかなり不明瞭ですし、プロジェクトの体制自体を否定しかねない評価基準になることが微妙なのです。

3番目の「公平性・納得感の向上」に関しても、難易度が低く、ビジネスモデルが優れているプロジェクトに偶然アサインされた人物の評価と、難易度が高く、ビジネスモデルが微妙なプロジェクトに偶然アサインされた人物の評価に関して、ほぼ偶然という要素が排除しきれない不公平性が漂っています。しかも、難易度というのもあいまいで、人によっては余裕だし、コピペでできるような事もよくあります。これらの3つの意見に関しては、私もまったく同感ですし、今後も業界では年功序列問題を含んだこの4つの課題に対しての有効的な解決先は出てこないと思います。
 

<IT業界の給与はどうしたらUPするのか?まとめ>

IT業界の給与がどのように決定されていくのか?が経済産業省の統計データや、私の経験からご理解いただけたと思います。偶然アサインされたプロジェクトがうまく行くこと自体が最近は減っているので、IT業界の創成期にいた人物の方が恩恵を得ている事が多いですが、今でも昔からあるようなサービスを上回るサービスの立ち上げと成功は魅力的で、給与UPにはかかせないと思います。また、そのサービスを作り上げるスキルを元に給与UPを日々続けていくことが重要だと考えています。

 

 

 

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