就職氷河期に起こったこと、これから起こること(コロナ禍の今も同じかも)

<就職氷河期に起こったこと、これから起こること(コロナ禍の今も同じかも)>

2020年の1月までは、どこの業界も人手不足で、求職者を求めて事業者が様々な手法で社員を獲得していましたが、このコロナ禍の影響のために2021年の新卒採用は非常に厳しい状況に陥っています。私が新卒で入社した2000年の会社の状況とかなり似ている状況になっていますので、そのころの体験を2021年度の新卒者向けにお伝えしたいと思います。

 

<書いた人の紹介>

転職職人と申します。2000年に新卒で大手SIerに入社。就職氷河期に入社したので、入れそうな会社にとりあえず入社。2~3年したら転職して給料が良いところに転職しようとして大手コンサルティングファームに転職エージェント経由で転職。その後、5社転職して現在もIT企業に在籍、マネージャー、部長、役員など幅広く経験しています。また、在籍している企業では毎年数十人の面接官もやっていますので、面接時に面接官が何を考えているか?をお伝えします。

 

<2021年度の新卒就職活動の現状>

まずは、このコロナ禍での就職活動の状況をお伝えするために、リクルート社の「就職未来研究所」が出しているアンケートの分析結果をもとに事実把握をしたいとかんがえています。

引用元:就職プロセス調査 (2021年卒)「2020年8月1日時点 内定状況」

このデータは、リクナビ2021に登録しているユーザーに対して行ったもので、集計対象は大学生 945人/大学院生 370人から集計したものだそうです。母集団もそこそこあるので、それなりに信頼できるデータだと考えています。前置きは置いておいて、コロナの影響がどれだけ就職活動に影響があったか?の図を引用したいと思います。

2020年の就職内定率(就職みらい研究所の資料より引用)

2020年の就職内定率(就職みらい研究所の資料より引用)

この図を見てもらえれば分かりますが、昨年度(2020年卒)の就職内定率と、本年度(2021年卒)の就職内定率の乖離は、10ポイント(%)ほどの乖離があると思います。おそらく、コロナの影響が読めなかった2020年5月時点では、3月、4月の面接者に対して内定を出していましたが、コロナが本格的になった5月からは内定を出しずらくなってきており、8月現在まで同じ状況に陥っているという状況です。それでは、どの規模の会社が内定を出しずらくなっているのか?という資料もありましたので、お伝えしたいと思います。

 

8月1日時点の内定取得先企業の業種(就職みらい研究所資料より)

8月1日時点の内定取得先企業の従業員規模(就職みらい研究所資料より)

2021年卒の就活者の内定先企業の業種についてのグラフになります。このグラフからわかることはシンプルですが、根深い中身が見えてきます。まずは中身ですが、従業員300名以上の中堅以上の企業が内定を出していないという事になります。また、その反対で、従業員が300名以下の企業は、内定者数が増加している傾向がみられると思います。これはどのような根深い中身になっているか?という事ですが、中堅以上の会社が内定を出さないので、就活者が小さい企業で人が足りなくて困っている企業に集まってきているという事になります。これは私が2000年の時に体験した就職活動と同じような状況に陥っていると感じました。後で、その時がどのような状況であったか?は解説したいと思います。

さらに、2021年卒の内定者に関する業界別のデータも見てみたいと思います。

 

8月1日時点の内定取得先企業の業種(就職みらい研究所資料より)

8月1日時点の内定取得先企業の業種(就職みらい研究所資料より)

この内容からわかることはいくつかありますが、2021年卒の人材は、業界ごとにコロナの影響を受けており、希望した業種に内定をもらえていないのではないか。と考えられます。たとえば、運輸業と書いてある部分ですが、分かりやすく企業を解説すると、ANAやJALなどの大手航空会社が全く内定を出していない状況から内定者数が3割も減少している事が良く分かります。また、コロナの影響で非常に忙しくなっている医療・福祉業に関しては、昨年度の1.7倍もの内定が出されている事が良く分かります。このような状況になっているのは仕方が無いかと思いますが、学生が自分が望んだ業界への就職活動が十分にできていない事は容易に想像できるかと思います。

 

<国の統計からみる就職者の数>

それでは、アンケートではなく、国の統計から実数を見たいと思います。下記の図は国の統計資料である、学校基本調査のデータを元に加工したものです。抽出したデータは、1999年(平成11年)と2000年(平成12年)、2018年(平成30年)と2019年(平成31年)の卒業者を対象に各大学が統計的にまとめたデータを文部科学省がさらにまとめた統計データになります。過去のデータを見ると、わかることがかなりあるので、紹介していきたいと思います。

 

大学生の進学先データ(1999,2000,2018,2019)

大学生の進学先データ(1999,2000,2018,2019)

 

これからわかることは、当時の大学生と現在の大学生では、分母としての大学に入学した人数が現在の方が多いことが分かります。また、2000年当時の就職者は2019年時点での就職者よりかなり少ないことが分かります。さらに、一時的な仕事に就いたもの(アルバイト?)の人数と、左記以外のもの(統計上不明)の就職できなかった人数の数が圧倒的に多かったという事が分かると思います。これがいわゆる就職氷河期の実態なのです。今まで、就職氷河期を実際のデータでちゃんと突き合わせているものはあまりお目にかかったことがなかったので、自力で調査しましたが、かなりの人数がまともな職につけていないという事が分かるのではないでしょうか。少し分かりやすく割合で出してみたデータが下記のデータになります。

 

大学生の進学先の割合(1999,2000,2018,2019)

大学生の進学先の割合(1999,2000,2018,2019)


こちらを見ていただければ、すぐわかることがあるのですが、そもそも就職できた割合が56%という、約半分の卒業生が就職できていない状況に陥っています。とはいえ、最近のデータでも75%が就職できている割合なので、今でも就職できていない人はかなり存在することもわかっています。上記のデータに臨床研修医の割合を足してもあまり変化は変わらないので、一旦誤差として扱いますが、「左記以外の者の割合」の部分の数値が圧倒的に異なることも驚きです。就職氷河期とは、このように統計的なデータでも証明されているくらいに恐ろしい時代だったのです。これと同じことが、まさに今年は起きようとしています。もしくは、起きかかっている?

仮に、現時点での就職者の割合が、アンケート通り10%下がっていて、そのまま変わらなかった場合には、2000年のころの就職氷河期の就職率と、昨年度の人手不足での就職率の約半分程度の中規模の就職氷河期になっているような感じかと思います。

 

<2000年ごろの卒業生はどう乗り切ったか?>

1999年当時は、私はアルバイト三昧でロクに就職活動をしていませんでしたが、偶然大手のSIerの就職が決まりました。これは単なる偶然で手に入れた就職先でしたが、周りの大学の友人は、このような決断に迫られていました。

・就職はできたが志望していた企業に落ちたので迷っている

・就職できなかったので、アルバイトをしようと考えている

・就職できなかったので、大学院の受験をしようとしている

・何がなんでも就職活動をがんばっていく

・就職浪人をするよりは、大学でダブった方が良いので、わざとダブる

これらの選択肢は様々でしたが、学生の間には悲壮感が漂っていました。一番きつかった選択肢は、大学を卒業したが、就職先は見つからなかったので、実家に戻って手伝いをする。という選択肢でした。一度実家に戻って手伝いをすると、その後に大手企業への就職はまず不可能な時代でした。また、当時はITベンチャー企業も人材の受け入れキャパシティーが足りなく、現在のような大量採用は行っていない時代でしたので、受け入れられる会社自体は極めてすくなかったのです。当時の大量採用していた企業は、今の大手企業とほぼ変わらないメンバーだったと記憶していますが、そのうち調査します。

ところで、その当時の学生がどのように乗り切ったのか?ですが、一つのヒントがありました。就職氷河期をなんとか乗り切るために、大学院への進学を希望した人材が多くいましたが、その人材の足取りを追うと、大手企業への就職を見事に果たしていた人材が当時でも多かったと記憶しています。当時、無理やり就職した人は、やりたくない仕事に従事していましたが、大学院へ進学した人達はそれなりに良い仕事につけていた事実は間違いありません。

 

<就職氷河期を乗り切るコツ>

私の実体験の就職氷河期を乗り切るコツは結果的には、このような方法でしたので、参考にして頂ければと思います。まずは、就職先の割り切りからスタートする必要がありました。というのも、大体の会社は募集がすぐに埋まってしまい、エントリーするだけでお断りの連絡がありました。そこで、自分が行きたい業界以外にも幅広くエントリーを行って、書類選考が通りやすい業界を抽出しました。その書類選考が通りやすい業界に絞って、さらにエントリーを増やしていく方法を取ったところ、面接まで漕ぎつくことができました。

次に行ったことは、エントリーシートを自分の得意な事や専門性があることだけで埋めることでした。どのみち、専門性があること以外で仕事をしたくなかったので、専門特化型の人材というアピールをしたという事になります。

また、就職するときから転職を考えていたことが重要かと考えています。当時からIT業界は激しいリストラを大手が行っていたことは知っていました。私が40代を過ぎたころに同じことをやられるのは、よくわかっていたので、早めの転職を決めていました。そう決めれば、ある程度の就職先は許容範囲になりました。どのみち、自分が努力しても変わらない世界があるので、一旦は自分の思いは奥に潜めておくのです。今回の就職氷河期でも、やりたい事を最初からスタートできる人が限られていると思いますが、次のステップでやりたい事を見つけるという戦略も悪くないと思います。

 

<コロナ禍での就職に困っている人へ>

今は、雌伏の時(ちょっとがまんする)だと考えてください。たまたま今はルーレットで当たりが来ないだけです。そのルーレットは時が経つにつれて自分の番が回ってくることがあります。大事なのは、その回ってきたルーレットでのチャンスを自分のものにする決意と判断です。ぜひ、次回のあたりくじが回ってきたかどうかを判断する目を持ちましょう。

 

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